大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和29年(オ)538号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

(1) 公職選挙法八六条二項、一項は、立候補推薦の届出の期間、すなわち、右届書提出の期間に関する規定であり、その届書作成の期間に関する規定でないから、仮りに所論のように、本件推薦届書が同条所定の期間前に作成された事実がありとしても、これを以て、同条に違反する無効の推薦書であるとすることはできない。又かりに、所論事前選挙運動の行われた事実がありとしても、当選人が同法二五一条により刑に処せられる等のことのない以上、それがために当然に、当選人の当選が無効となるものでない。

(2) 推薦届人十一名中、一名の推薦が、かりに無効であつても、他の推薦に瑕疵がない以上、この推薦書は有効なものと解すべきであるとした原判決の判断は正当である。

(3) 立候補推薦届人が後に選挙管理委員となり、同委員として同一候補者の当選決定に対する異議事件の決定に関与したとしても、右の事項は地方自治法一八九条二項所定の選挙管理委員の除斥事由に該当するものでないから、それがため右選挙管理委員会の「異議に関する決定」を違法ならしめるものではない。(原判決が「選挙会の当選人決定に関与し」としているのは「選挙管理委員会の異議決定に関与し」の誤記であることは、原判文の全体を通読することにより明らかである。)

(4) かりに候補者池田嘉吉に選挙違反の事実があつたとしてもそれだけで当然に同人の当選が無効となるものでないことは(1)において説示のとおりである。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条により、全裁判官一致の意見により、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例